つまらないおっさん

「鞄が当たってんだよ!バカヤロー!」

 

「狭いんだからしょうがないだろ!」

 

「誤れよ!」

 

僕の向かいに座る二人のでっかいサラリーマンが、丸ノ内線の車内でケンカを始めた。

 

うるせぇなと思いながらも、僕を含め周りの乗客は無関心を装っていた。

 

ケンカを始めて二駅過ぎたところで、二人は更にヒートアップした。

鞄を抱えていたおっさんが、先に声を荒げたおっさんに掴み掛かった。

 

すると僕の隣の隣に座っていたおっさんが止めに入った。

 

そのおっさん一人じゃ無理だろうと思い、

物語の佳境に入っていたカミュの「ペスト」を閉じて

あぁーもうっ!と思いながら、僕もケンカを止めに入った。

 

馬乗りになろうとしているおっさんを動いてる電車の中で

引っぺがすのはとても大変だった。

 

一体僕は何をやってんだとか、

ネクタイをしてのケンカは掴まれて不利だなとか

止めに入ったおっさんはグレーのスウェットだなとか、

こんなことを考えている僕は、本当に止める気があるのだろうか、

などと色々な考えが頭の中を回った。

 

更にもう一人おっさんが来てくれたおかげで、

なんとか引っぺがしに成功した。

 

 

そして、先に声を荒げたおっさんの横に、スウェットのおっさんが、

先に掴み掛かったおっさんの横に、僕が座った。

 

 

終点の池袋に到着すると「もう一度冷静に話し合おうぜ!」

と2回戦のゴングが鳴った。

 

そして僕の心には空しさが一気に広がった。

仲裁に入った男性の表情にもそれが見て取れた。

ほとんどの乗客が降車したのを見て、

僕と男性も、ケンカする二人を残しその場を離れた。

 

その一部始終を見ていた若者達の笑い声が、さらに空しさを押し広げた。

 

 

今日は「時間」について書こうと思っていたのに、その気が失せてしまった。

で、単なる愚痴を書きました。

それも長々と。

 

つまらん。

 

つまらん。

 

つまら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!