ノサックというドイツ人の短編集を読んでいる。
「死神とのインタビュー」というタイトルに惹かれたからだ。
第二次世界大戦下の過酷な体験を、
寓話や神話、人間以外の生命からの視点などを用いたり、様々な手法で描いている。
過酷な運命を表現するには、現実からの1つの視点だけでは足りないと考えたのかもしれない。
運命は現実をいとも簡単に飛び越えてしまうから。
戦争という現実ともう1つの次元を行き来させることで、ぐいぐい本の中に引き込む。
戦争の悲惨さと生命というか魂そのもの、死と生を同時に強く感じさせられてしまう。
文章の中に「境界線」という言葉が何度か出てきた。
こちらでもあちらでもないその上を彼は孤独に一人歩き続けたのだと思った。
どうやってその苦難を乗り越えたのですかと尋ねたら、
乗り越えたかどうかなんて分かりませんよと答えるような気がする。
本文中にもそんなようなことが書いてあった。
でも、乗り越えようという強い意思は持っていたに違いないのだ。
一切合切が虚しさだけだったら、文章なんて書けないし、何も行動出来なくなる。
深淵の縁から滑り落ちて、飲み込まれるだけだ。
去年フランシス・ベーコン展を見た時にも同じようなことを感じたのを思い出した。
そしてその時も僕は勝手に勇気や元気をもらった。
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