日没

ある朝のこと、

夜遅くまで遊んでいたニワトリが寝坊をして太陽に怒られました。


「いつまで寝ているんだニワトリさん。

コケコッコーときみが鳴かなきゃ、一日が始まらないよ。

もっとしっかりしたまえ。」


注意されたことに腹を立てたニワトリは、

太陽に向かって自分のウンコを投げつけました。


それからニワトリはプリプリ怒って散歩へ出かけました。


ところで、投げつけたウンコは、太陽までは届きませんでした。


民家の屋根でウトウトしていたネコの額に落ちました。


「にゃあー!誰だ僕の額にウンコを落とした奴は!」


ネコはあたりを見回したけれど誰もいませんでした。

怒ったネコは太陽の仕業だと勘違いし、太陽に向かって額のウンコを投げつけました。


そのウンコも、やはり太陽までは届きませんでした。


それは木の実を取ろうとしていたサルの上に落ちました。


「ウキッ!もう少しで木の実が取れたのに、僕にウンコを落とした奴はだれだ!」


サルはあたりを見回したけれど誰もいませんでした。

怒ったサルは太陽の仕業だと勘違いし、太陽に向かってそのウンコを投げつけました。


しかしそれも太陽までは届きませんでした。


そして、草原を走っていたチーターの上に落ちました。


「ガオッ!気持ちよく走っていた僕にウンコを落とした奴はだれだ!」


チーターはあたりを見回したけれど誰もいませんでした。

怒ったチーターは太陽の仕業だと勘違いし、

そのウンコをしっぽを使って「びゅん」と太陽に向かって投げつけました。


やっぱりそれも太陽までは届かず、水浴びをしていたゾウの上に落ちました。


「パオーーン!体をきれいに洗ったばかりの僕にウンコを落とした奴はだれだ!」


ゾウはあたりを見回したけれど誰もいませんでした。


怒ったゾウは太陽の仕業だと勘違いし、

長い鼻を使ってウンコを太陽めがけ「ぶんっ」と投げつけました。



投げたウンコはぐんぐん飛んでいきました。


でもやっぱり太陽までは届きませんでした。


そして、プリプリ怒って散歩をしていたニワトリの上に落ちました。


「コケーッ!白くてきれいな僕にウンコを落とした奴はだれだ!なんて嫌な奴だ!」


ニワトリはあたりを見回しましたが、誰もいませんでした。


そして太陽のウンコだと思いました。


それと同時に太陽も自分と同じように嫌な思いをしたのだと気がつきました。


ニワトリは素直に謝ることにしました。


「太陽さん、ごめんなさい。」


太陽がニコリと笑いました。



おしまい。



・・・ここで終われば「天に唾する」とか「因果応報」のお話となるのだろうが、時は21世紀。

なかなかそうはいかないのだ。


話は少し遡る。


プリプリ怒って散歩をしていたニワトリは、

自動販売機の下にドクロマークが描かれた小さな袋を見つけました。


突いて破ってみると白い粉が出てきました。

小腹が減っていたニワトリは迷わず食べてみました。


すると今まで味わったことのない気分の良さでテンションMAX。

一気に力が漲ってくる気がしました。



と、そこにウンコが落ちてきました。


「コケーッ!白くてきれいな僕にウンコを落とした奴はだれだ!なんて嫌な奴だ!」


ニワトリはあたりを見回しましたが、誰もいませんでした。


しかし力は漲っていたので、とりあえず走り出しました。


すると遠くにキリンを発見しました。


あいつならここまでウンコを飛ばせるに違いないと思ったニワトリは、

キリンめがけて突進しました。


そして自慢のくちばしで、キリンのふくらはぎをブスリとやりました。


あまりの痛さにキリンは激しく暴れ出しました。


すると、キリンの長い首は激しく暴れたせいでさらに長くなりました。


キリンの首はぐんぐん伸びて、水浴びをしていたゾウの土手っ腹に一撃を加えました。


しかしキリンの首はまだ伸びます。


そして、走っていたチーターの腰に一撃。


まだまだキリンの首は伸びます。


そしてサルが登っていた木をなぎ倒し、ネコがいた民家の屋根を破壊しました。


まだまだまだキリンの首は伸びます。


ずーっと、ずーっと、ずーっと伸びてキリンの首は太陽まで届きました。


そして太陽に頭を乗せたところでキリンは力尽きました。


するとキリンの重みで太陽はどんどん沈み始め、ついには夜に飲み込まれました。



月が顔を出した時、ニワトリは「コケコッコー!」と鳴きました。